「指定管理者制度」と実務。公共施設の管理を民間企業が行う理由
-日本体育施設の公園管理運営士が教えます!-

このページでは『指定管理者制度』と実際の業務について、公園管理運営士である日本体育施設パークマネージメント事業部の山﨑さんに解説してもらいます。
指定管理者の実務-
Q8施設の管理業務とは?
以下繰り下げ
Q.8公園の安全管理はどんなことに取り組んでいますか?
Q.9公園の環境保全はどのような取り組みですか?
公園や公共スポーツ施設の地域連携について
Q.10地域連携として行っていることは?

「指定管理者制度」について

はじめに、耳慣れない「指定管理者制度」について解説してもらいます。普段皆さんが利用する公園がどのような制度で管理されているのか、理解の手助けになれば幸いです。

Q.1「指定管理者制度」とはなんですか?

A.1
2003年の地方自治法の改正に伴い、民間企業が公共の施設の管理が出来るようになりました。民間事業者の持つノウハウを生かし、住民サービスの向上と経費の削減等を図ることを目的にしています。これを「指定管理者制度」と呼びます。
地方自治法第244条の2に定められ、公民連携の手法の一つです。対象施設は地方自治体が住民の利用のために設置し、住民の福祉増進を目的とするものです。具体的には体育館などの運動施設、都市公園、博物館、老人福祉施設、公立病院、などが対象とされ、庁舎や試験研究所、競輪場など対象外となる施設もあります。
「指定管理者制度」に則った地方自治体の条例に従ったプロセスで、地方議会での承認を受け、指定管理者が選定されます。

Q.2公共施設の管理を民間企業が行うようになった理由はありますか?

A.2
「指定管理者制度」の目的は、民間事業者の持つノウハウを生かし、住民サービスの向上と経費の削減等を図ることを目的にしています。
それまでスポーツ施設を含む公共または公共団体の管理運営は、政令で定められた出資法人等に委託先が限定されていました。ただ、住民はじめ利用者のニーズが多様化してきたことから、より効果的、効率的に対応するためには民間のノウハウの活用が有効であると判断されました。
「民間でできることは民間で」の流れもあり、「公民連携」で多様なニーズに答えようと、管理の受託主体の法律上の制限がなくなり、民間企業が管理できるようになったのです。

Q.3スポーツ施設の管理を民間企業が行うメリットは?

A.3
これまでは、地方自治体が所有する体育館などのスポーツ施設の運営は、地方自治体の職員が行っていました。とはいえ、スポーツ施設の運営には様々なノウハウが必要となります。建物の維持管理はもちろん、備品やスポーツ器具のメンテナンス、利用者の予約や使用の管理など多岐にわたります。地方自治体の職員ではその知識の取得にも時間がかかり、ノウハウが蓄積されることも難しく、そうした人員を確保することも容易ではありません。
その点、スポーツ施設の運営ノウハウのある民間等の事業者であれば、管理業務に必要な専門知識・技術があり、適切な保守・整備が行われることが期待できます。
このように人件費や業務効率化の観点から、民間企業等に任せることが、利用者=住民サービスの満足度の向上に役立つと考えられ、このことが指定管理者が設置された趣旨にも適っているといえます。

Q.4「指定管理者制度」と都市公園管理運営の「業務委託」の違いは何ですか?

A.4
「指定管理者制度」では、利用料金を自らの収入として収受することが可能で、サービスの向上による利用者増、自主事業の工夫により収入を増やすこともできます。これを「利用料金制度」といいます。
「指定管理者制度」を採用した自治体は、管理権限の行使はしませんが、設置者としての責任を果たすため、必要に応じて指示等を行うことになります。自治体に集まる地域住民のニーズや要望をもとに、すり合わせを行いながら主体的に公共施設を運営していくことが求められます。
 
一方、業務委託の場合、一般的に公共施設の管理運営は設置者である自治体が主体で行います。そのため民間企業等は「業務委託」を結び、その契約の範囲内で自治体の仕様通りに管理することが求められます。この場合、公共施設の管理やイベント等の施策を行う際に制限が多く、予算も決められているため柔軟な運用ができにくい場合もあります。
都市公園の「業務委託」では、自治体との契約の範囲内で自治体の仕様通りに管理することが求められます。一方、「指定管理者制度」では、民間の活力やノウハウを活かした管理運営が求められます。発案企画から実現までを一貫して民間が行えるところが業務委託との大きな違いかと思います。
当社では、指定管理者として、中野区や町田市など、委託管理としては、品川区の中央公園・海上公園他と荒川区立宮前公園を行っています。



 

契約体系が違っても、利用者にとっては関係ありません。どのような契約体系であっても利用者から信頼される、総合的なパークマネージメントを当社は目指しています。

管理実績

指定管理者(代表企業)

 

指定管理者(構成企業)

 

 

Q.5指定管理者制度とPFI法の違いは何ですか?

A.5
法令の根拠が異なります。指定管理者制度は、地方自治法のもとに、PFIはPFI法のもとに定められた手法です。
 
指定管理者制度は、公園設置者である行政に代わって、公園施設の使用許可や公園施設内で行われる行為制限に係る許可を行うことのできる権限を有しています。指定管理者はこれらの権限の元、施設運営の一環で「自主事業」として地域住民の利用促進を目的にイベントや活動を企画・実施することが可能です。指定管理者制度は事業期間を5年以上としている施設もありますが、5年としている施設が多いです。
 
PFI事業は、民間が資金を調達して公共施設の整備をしたり、維持管理運営を一体的に実施する事ができます。
また、PFI事業では事業期間を最長30年まで延長する事ができます。


指定管理者の実務-施設の管理業務とは?

この章では、中野区の公園で指定管理者として実務にあたる山﨑さんに、公園や公共スポーツ施設・安全管理・環境保全についての実際の業務内容を教えてもらいました。

Q.8公園の安全管理はどんなことに取り組んでいますか?

A.8
1日3回の巡回、毎朝礼時の危険予知活動(KY活動)、定期的なスタッフ研修、安全標語の掲示・KYシートの活用、四半期毎の安全点検の実施、遊具の日常点検・定期点検などが日常的な業務です。巡回では、不審者がいないか、危険物が落ちていないか、などに特に気をつけています。
また、授乳スペースを設けたりなど多様性に配慮して、安全性の確保に取り組んでいます。安全点検では、こうしたスペースが支障なく使用できるかもをチェックしています。
そして、施設予約などの場面においては、ご利用いただく皆様の個人情報の管理に関して、慎重に取り扱い、プライバシーの保護に最大限の注意を払っています。

Q.9公園の環境保全はどのような取り組みですか?

A.9
植物管理で発生した剪定枝や、伐採した樹木は、クリスマスリース用のキットとしてイベントで販売したり、クラフト教室で活用しています。
 
その他、蛍光灯のLED化、落ち葉の堆肥化、空調を効率的に稼働して外気を活用すること、などに取り組んでいます。

販売したリースキッド

公園や公共スポーツ施設の地域連携について

地方自治体等が管轄する公共の施設は、住民サービスの充実を目指すものです。その意味でも重要な地域との連携について、山﨑さんに教えてもらいました。

Q.10地域連携として行っていることは?

A.10
公園では、地域の健康づくりなど健康ニーズに対応して、健康体操教室や産後ヨガ『ママフィット』を実施したり、地域文化の伝承を図るべく吟行や講釈などを行っています。また、マスコットキャラクターをデザインし、地域に親しまれる広報発信をおこなっています。
例えば、地元の商店街連合会や区内で活動している団体との連携事業として、チャリティーコンサート・バザーなどを実施しています。
 
また、中野区図書館との連携事業として、図書館内の展示スペースへの広報物の展示を行っています。図書館の職員さんが紙芝居などを使って公園内の施設で読み聞かせを行うイベントも昨年初めて行いました。グローバルな取り組みとして、インドネシアのワヤンという影絵劇の上演は、大変人気で、多くのお客様に鑑賞いただきました。
また、区民・地域住民が自主的に参加いただける活動『パーククラブ』では、花壇のお手入れや、哲学堂公園の歴史を共に学ぶ学習会を開催しました。
 
毎年行っている、復興支援バザーでは大雨の年もありましたが、それでも80名近いの方が来場されました。こうした、地域の方々と連携してイベントを作り上げるというのも楽しみで、仕事のやりがいとなっています。